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                                                  2016.8月更新

・マイコプラズマ肺炎について
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症です。
小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的よくあるものの1つです。好発年齢は、6~12歳の小児とされています。
<感染経路について>
 患者の咳のしぶきを吸い込んだり、患者と身近で接触したりすることにより感染すると言われています。家庭のほか、学校などの施設内でも感染の伝播がみられますが、短時間での感染拡大の可能性は低く、家族・友人間等の濃厚接触によるものが重要です。
 感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいとされています。抗体は産生されますが長続きせず、個人差があり、再感染もよく見られます。
<症状について>
  発熱や全身倦怠感(だるさ)、頭痛、痰を伴わない咳などの症状がみられます。咳は少し遅れて始まることもあります。咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴です。
 多くの人はマイコプラズマに感染しても気管支炎ですみ、軽い症状が続きますが、一部の人は肺炎となり、重症化することもあります。重症化した場合には、入院して専門的な治療が行われます。長引く咳などの症状があるときは、医療機関で診察を受けるようにしましょう。
 一般に、小児の方が軽くすむと言われています。幼児では鼻炎症状がみられることもあります。登園・登校基準は、発熱、咳嗽など主要症状が改善すれば可と考えられます。
<感染予防について>
  感染経路はかぜやインフルエンザと同じですので、普段から、手洗いをすることが大切です。また、患者の咳から感染しますので、咳の症状がある場合には、マスクを着用するなど咳エチケットを守る必要があります。
 <治療方法について>
  抗菌薬(抗生物質)によって治療します。抗菌薬のうちでも、ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がなく、マクロライド系やテトラサイクリン系、ニューキノロン系と一部に限られています。近年、マイコプラズマ感染症に通常使用される抗菌薬の効かない「耐性菌」も増えてきているとされています。

 小児ではクラリスロマイシンアジスロマイシンがよく用いられます。マクロライド系に耐性がある(2~3日以内の解熱がない)と判断された場合、トスフロキサシン(オゼックス)等も用いられることがあります。トスフロキサシンを除くニューキノロン系(関節障害、けいれん誘発)やテトラサイクリン系(8歳未満の小児で歯牙の色素沈着)は小児に対し禁忌があるため気を付ける必要があります。
 第一選択薬とされるマクロライド系の散剤は特に苦味が強く、飲み合わせにも注意する必要があり、保護者に対し服用における指導が重要です。(→乳幼児への薬の飲ませ方について)
 
(参考:国立感染症研究所感染症情報センター、厚生労働省のQ&A、日本マイコプラズマ学会「肺炎マイコプラズマ肺炎に対する治療指針」より)